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足の爪

足の爪が伸びたので切ろうと思い、眼鏡をかけて驚いた。ひだり親指の爪上方に、横にくっきりと筋が入っている。右も同様である。手の指先で触ってみると、表面から刻み込んだように段差さえあり、実際そこが凹んで手の爪が引っ掛かるほどだ。

爪は体調により、筋が入るという。筋のあること自体に驚いたに相違ないが、それよりもこんなに上の方に来るまで気付かなかったのにも驚いた。眼鏡は老眼鏡である。刃物を持つから掛けたまでで、手許が危なくないならそもそも自分のからだを見るために、眼鏡などは掛けない。これは、目の老化に気付かなかったのに驚いたのである。まあこれは、分かり切った事でいまさら驚いても仕方がない。問題は筋の出来た原因のほうだ。

これを発見したのは、9月19日である。爪の筋は過去の出来事を反映するそうだ。何か体にインパクトがあったろうか、と考え、あっ、あれだと思い至った。と同時に、また怒りが込み上げて来た。6月21日夜、横断歩道を通行中に、前方不注意で進入して来た車に跳ね飛ばされたのである。体が宙に浮いて腰から落下した。つまり、交通事故に遭遇したのである。その後遺症で、今でも治療中なのである。(しかし、その顛末はまた別の話しである。)

13ミリひだり筋右筋
爪の筋
爪の筋 11月19日

その因果関係を定めるために、爪の生え際から筋の位置を計ったら、10ミリだった。しばらくしてまた計れば,爪の伸び具合が分かり,逆算すれば、10ミリがどのくらいの昔か分かる筈である。因果関係が知れて、それが事故との関係がどうなるのかは分からない。しかし、証拠は押さえておかなければ成らない。事故は三ヶ月前である。

通院の折、医師にその旨話すが、そうかも知れない、と冷たい返事だけが返って来た。医師の問題ではなく、保険屋の問題なのだから、しかたない(そもそも加害者が自己の責任を果たさず金で保険屋に任せている事が既に気に入らない:怒)。

その後、また爪を切る機会が訪れた。11月19日である(より正確に言えば、計算の便宜のために19日に合わせたのである)。二ヶ月に一度くらいしか自分は、足の爪を切らないのだと、このとき初めて認識した。案外伸びないものだ。計ると13ミリである。二月で3ミリ伸びた。おや3ミリでは、爪の筋が車に跳ねられて出来たとすれば、計算が合わない。6.7ミリ近くでなければ、因果関係は定まらない。証拠写真を残す事にした。

では、9月19日から、10ミリ過去は、一体いつなのか。二ヶ月3ミリの速さで、6.7ヶ月前、つまり3月上旬である。何かと言えば、東日本大震災の原因だった3月11日の東北地方太平洋沖地震であろう。それ以外に思い当たる節はないのである。

その後、12月21日に計ったら、14ミリだった。

爪の伸び:実測と想定
*10mm/3ヶ月(0.1111mm/day)、†3mm/2ヶ月(0.0492mm/day)
日付累積日数根元から筋まで
実測事故想定(*)地震想定(†)
3/110--0
6/21102-0
9/1919210mm10.00mm9.45mm
11/1925313mm16.78mm12.45mm
12/2128514mm20.3314.02mm

交通事故は私的に大きな出来事であった。大地震は公的に大きな出来事であったのは言うまでもない。両者は公私で意識にのぼった出来事であった。一方、足の爪に現れたのは、大地震が無意識のレヴェルで知らず知らずのうちに与えた、底知れぬ言い表す術のない、それこそ爪痕である。これを忍び寄る恐怖と捉えれば、ちょっと落ち着かない。

Copyright © 2012 Tagata Akira
更新履歴
2012-01-08
掲載開始
2012-01-09
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